第一話  白天下棋、黒夜交尾。就是「五」和「六」的日常。 








 むかーし昔のお話です。

 人間が空を飛び、木や草や動物たちが言葉を話した頃のこと。

 虫が碁を打つことだって、めずらしくはありません。



 碁が好きな、二匹の蝶がいました。

 片方の蝶は、三度の食事より碁が好き。

 もう片方は、食事の次くらいに碁が好き。

 お花の碁盤に、白い種と黒い種。

 日がな一日、碁を打って過ごしています。



 とてもなかよしな二匹ですが、どちらも負けず嫌いの頑固者。

 お互いの手に疑問があると、局後の検討は大論争になってしまいます。

 それはまさに、口角泡を飛ばすといった勢いで。

 やがて、討論の域をはみ出して、レベルの低いケンカへと様変わりする頃、服に「5」と書いてあるほうの蝶が機嫌を損ねて、「帰る!」と飛び立っていきます。

 帰ると言ったところで、二匹の蝶は、おなじところに住んでいます。

 「5」の蝶の機嫌がなおった頃合を見計らって、服に「6」と書いてある蝶も、家に帰ります。

 「5」の蝶の名前は、進藤ヒカル。

 「6」の蝶の名前は、塔矢アキラ。

 どうして「5」と「6」なのでしょう。

 これは、別に、ゼッケンでもなんでもありません。

 昆虫の世界では、服に文字を入れるのが流行しているようで、ヒカルは、さっそく好きな数字である「5」を書き込んだのです。

 でも、アキラは、そういったセンスは持ち合わせていません。

 そこで、ヒカルの真似をして、「6」と書いたのです。

 こういったところにも、センスのなさがにじみ出ているのですが、それは置いといて。

 ヒカルとアキラは、つがいの蝶です。

 つがいですから、寝室も一緒。

 当然…………交尾もします。

 昼間、どんなにケンカをしたって、夜になれば、いちゃいちゃラブラブv

 なんだかんだいって、なかよしさんです。



 さて、昼間は対局と検討とケンカ、夜は交尾愛の営み、という毎日を過ごしていたヒカルとアキラのもとへ、一匹のアリがやって来ました。

 働き者のアリは、昆虫王の使者です。

「王様が、おふたりをお呼びですよ」

 任務に忠実なアリは、忙しく足を動かして、早く早くと急かします。

「王様が? せっかく対局がおもしろいところまで進んできたのに。……なんだろう」

「どうせロクなことじゃねえよ。あーあ、めんどくせえなあ」

 口々に不満を言いますが、昆虫王からの呼び出しとあらば、行かないわけにはいきません。

 ヒカルとアキラは、碁石がわりの種をしまうと、アリに先導されて、昆虫王のもとへと向かいました。



                                              つづく



 ……続けます。ええ、続けますとも。