第2話 昆虫王有件事想求蝴蝶




 ふたりは、昆虫王のお城へとやって来ました。

「待っていましたよ、ヒカル、アキラ」

 お城の中庭でふたりを出迎えてくれたのは、他でもない昆虫王の佐為でした。

 昆虫の世界の王様だけあって、佐為は、他の虫にはない美しい青い翅をもったセミです。

「こんにちは、王様。お元気そうでなによりです」

「なんだよ、王様。せっかく中盤に入って、おもしろくなってきたトコだったのに」

 アキラは、お行儀よく挨拶をしましたが、ヒカルは、ちょっと不機嫌そうです。

「おやおや、碁を打っていたのですか。それは悪いことをしましたね」

 佐為は、申し訳なさそうな顔をしました。

 あまり威張った王様ではないようです。

「で? オレたちにいったい、なんの用だよ」

 ヒカルは、「さっさと帰って続きを打ちたいんだよ」と、話を促しました。

「実はですね。伝説の秘宝が、実在しているかもしれないという情報が入ったのです」

 佐為は、手にしていた扇子をひらいて口元にあて、内緒話をするように小声で言いました。

「伝説の秘宝というと……あの『イロモノ傳』に書かれているアレですか?」

 アキラは、驚いたように尋ねました。

「ええ、その通りです。そこで、ふたりに、その秘宝を見つけて持ってきてほしいのです」

「伝説の秘宝とか、イロモノとか……。なんのことだ?」

 きょとんとしているヒカルに、アキラと佐為が説明してくれました。

「古くから昆虫界に伝わる伝説だよ。その宝を手にした者は、幸せになれると言われているんだ」

「なんでも願いを叶えてくれるとも言われています。そんな物が、心ない誰かの手に渡ってしまったらたいへんです。一刻も早く見つけ出して、お城の奥にしまっておかなくては」

「ふーん。うさんくせえ話だな」

 ヒカルは、興味なさそうです。

「でも、『イロモノ傳』によると、カブトムシさんやクワガタさんが立派なツノを持つようになったのは、その秘宝を手にしたからだそうだよ」

「だからって、別にオレ、ツノなんかいらないし。おまえは欲しいのか?」

「いや、ボクもいらないよ」

「だったら帰ろうぜ。そんなマユツバもんの話、あてになんねえし」

「そうだね」

 ヒカルとアキラは、「じゃ、そういうことで」と、うしろを向きました。

「そんなあ……」

 佐為は、王様の威厳もなにもあったものではなく、シュンとしてしまいました。

 メソメソと泣き出してしまった佐為を振り返ることなく、ヒカルとアキラは、さっさと歩いていきます。

 ところが。

 佐為は、なにかいいことを思いついたらしく、がばっと顔をあげました。

「伝説の秘宝を探し出してくれたら、ご褒美をあげましょう」

「「ご褒美?」」

 現金なもので、ふたりはその言葉に、ぴたっと足をとめました。

「あなたたちは、もともと人間だったのでしょう? もう一度、人間として生きてみたいとは思いませんか? わたしなら、伝説の秘宝の力を借りて、ふたりを人間にしてあげることができますよ」

「人間ねえ…………別にいいや。オレ、今の生活に満足してるし」

 ヒカルは、そう言いますが、アキラは違うようです。

「人間か……」

 顎に手をあてて考え込んでいたかと思うと、なにやらひらめいたような顔をしました。

 いったい、なにをひらめいたというんでしょうか。






佐為ちゃんはセミです。

ええっ? そうは見えない?

……心眼で見てください(涙)。





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