続・はなげのれんきんじゅちゅしハガレンファンの方と、ハガレンをご存知でない方は要注意!

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 ある日のこと。

 ヒカルちゃんは、お母さんと一緒に、おじいちゃんのおうちに行くことになりました。

 おじいちゃんのおうちは、すぐ近くです。

 お母さんと手をつないで、お歌をうたいながら歩いているうちに、あっというまに着いてしまいました。

「おお、ヒカル。よく来たね。さあさあ、上がって上がって」

 おじいちゃんは、ヒカルちゃんの頭をなでたあと、お母さんと、おとな同士のご挨拶をしています。

「すまんねえ、美津子さん。ただのものもらいなんだが、どうも距離感がつかめなくて」

「いいえ、とんでもない。片方の目だけで物を見るんですもの、たいへんでしょう。わたしにお手伝いできることがありましたら、なんでもおっしゃってくださいね」

 お母さんの言葉に、ヒカルちゃんは、おじいちゃんの顔をじーっと見てみました。

 すると、あら、たいへん。

 おじいちゃんは、左目に、白い眼帯をしているではありませんか。

「おじいちゃん。おめめ痛いの?」

 ヒカルちゃんは、心配そうに訊きました。

「いやいや、ちっとも痛くないよ。ただ、バイキンに見つからないように、こうやって隠してあるだけで」

 ヒカルは優しいなあ、と、おじいちゃんは、また頭をなでてくれました。

 ヒカルちゃんは、眼帯をしたおじいちゃんに会うのは初めてですが、こんな風景を、どこかで見たことがあるような気がしました。

「うーーーーん」

 ヒカルちゃんは、一所懸命考えます。

 定年退職したばかりで、まだまだ元気はつらつなおじいちゃん。

 左目には眼帯。

 そして、今日の服装は、紺色の甚平です。

「わかった!」

 ヒカルちゃんは、右手で敬礼の真似をして、大きな声でご挨拶しました。

「だいそーとーかっか! こんにちは!」

「へ?」

「だけど、おめめを隠すのは、黒い布だよ」

「は?」

 おじいちゃんは、眼帯で隠れていないほうの目を点にして、あんぐりと口をあけました。

「いやだわ、この子ったら。ごめんなさい、お義父さん。ヒカルは今、「はなげの錬金術師」とかいう漫画に夢中なんです」

「はなげ……。そりゃまた、ずいぶんと変わった名前の漫画だねえ」

 お母さんは、ヒカルちゃんの言った「はなげのれんきんじゅちゅし」という作品名を、そのまま信用してしまったのです。

 そして今日。

 ここにまたもうひとり、伝言ゲームの被害者が誕生したのでした。







 さて、それからしばらく経った頃。

 おじいちゃん=大総統という図式を得たヒカルちゃんは、身近な人物で、大好きな「はなげのれんきんじゅちゅし」の登場人物をコンプリートできないものかと、考え始めるようになりました。

「ヒカは女の子だから、「うぃんりぃ」。これは決定。あかりちゃんが、うぃんりぃがいいって言っても、ヒカがうぃんりぃだからダメ」

 女の子の登場人物が少ない漫画らしく、ヒカルちゃんは真っ先に、かわいい女の子の役に自分を当てはめました。

「タクシーのおじちゃんが「ちゅーさ」で、アキラくんのお父しゃんのとこに来る倉田しゃんが「ぶれだしょーい」で……」

 ヒカルちゃんは、主人公をはずして、渋いところから配役を決めていきます。

「しょれから、「しゃおめい」と「たいさ」と「えど」と「ある」と……」

 そこまで言うと、ヒカルちゃんは、お部屋のなかを見回しました。

 カラーボックスの上に、大きなパペットが置いてあります。

 ねずみーらんどの人気キャラクターで、ハワイ在住のエイリアンです。

「ちょっと違うけど、色が似てるから、この子が「ある」に決定」

 ……ちょっとどころではなく、だいぶ違います。

「あとは「しゃおめい」と……」

 ヒカルちゃんは、「ある」役に決定したパペットのまわりに並ぶ、たくさんのぬいぐるみを、じーっと睨みつけました。

 そこには、ヒカルちゃんのお気に入りのくまさんたちが、ところ狭しと並んでいるのです。←注:拙作「乞巧節」参照

「……だめだぁ。色が違う。迷彩熊のがみしゃんは、もっと違うし……」

 がっくりとしょぼくれたのは、ほんの一瞬でした。

「しょーだ! おがたんだ!」

 ヒカルちゃんは、「ヒカ、アキラくんちに行ってくるね!」と、お母さんにことわると、大急ぎでアキラくんのおうちへ向かいました。

 ちょうどいいことに、おがたんは今日、アキラくんのお父さんに碁を教えてもらうために、アキラくんの家に来ているのです。







「ごめんくだしゃーーーーーい」

 呼び鈴には手が届きませんから(←注:拙作「アキラくんとヒカルちゃん」参照)、ヒカルちゃんは、大きな声でご挨拶します。

 いつもなら、「アーキーラーくーん。あーしょーびーまーしょー」と言うところですが、今日は、おがたんに用事があるのです。

 アキラくんのお母さんに迎えられて、ヒカルちゃんは、さっそく碁盤のあるお部屋に向かいます。

 すでに碁のお稽古は終わっていたようで、おがたんは、アキラくんとアキラくんのお父さんと一緒に、碁談義に花を咲かせていました。

「おがたん、おがたん」

「なんだ、進藤。挨拶もできないのか」

 ヒカルちゃんは、おがたんに言われて、あわててご挨拶をしました。

「こんにちは」

「それで? 俺に何か用か?」

 ヒカルちゃんに関わると、ろくなことがありませんから(注:拙作「巧言令色鮮矣仁 」参照)、おがたんは、自然と身構えてしまいます。

「あのね、あのね。ヒカ、おがたんにお願いがあるの」

「お願い? どういうことだ?」

 怪訝そうな顔を向けるおがたんに、ヒカルちゃんは、お願いの内容を、かいつまんで要領よく伝えようとしました。

「えっとね。おがたんに、「しゃおめい」になってほしいの」

「しゃおめい? 何だ、それは」

「しゃおめいはね、はなげのれんきんじゅちゅしに出てくる、白黒の小さい動物の名前なの。おがたん、知らないの?」

「知らんな。だいたい、はなげのなんとかとかいう、妙な名前は、いったいなんなんだ」

 おがたんには、まったく通じていません。

 そこで、アキラくんが助け舟を出します。

「ヒカルちゃんの好きな漫画だよ。ボクも詳しいことはわからないんだけど。……お父さんは知りませんか? はなげのれんきんじゅつし」

「……残念ながら、知らないな」

 アキラくん。

 あなたのお父さんに訊くのが間違いです。

 そもそも、漫画のタイトルからして間違ってます。







 とにかく、ヒカルちゃんはおがたんを連れて、アキラくんのお部屋に行くことにしました。

 アキラくんも、ヒカルちゃんがおがたんとなかよくしている(違)のが気になって、あとをついていきます。

「アキラくん、油性ペン貸して」

 ヒカルちゃんは、お部屋に入るなり、そう切り出しました。

「え? うん、いいよ」

 机の引き出しから油性ペンを取り出すと、アキラくんはキャップを取って、ヒカルちゃんに手渡してあげました。

 ヒカルちゃんの左手は、おがたんをぎゅっとつかんでいて、キャップをはずすのが難しそうだったのです。

「くれよんさんじゃ塗れないって、アキラくんが言ってたもんね」←注:拙作「白猴子」参照

「な、何をする気だ、進藤。まさか……」

 おがたんは、顔をひきつらせて身じろぎしましたが、ヒカルちゃんの手はびくともしません。

「しゃおめいはね、白と黒のパンダさん模様なんだ〜♪」

 油性ペンをおがたんに近づけながら、ヒカルちゃんは、にっこりと笑いました。

「やめろ! やめてくれ! 頼む! やめるんだ、進藤!」

 すぐそばで見ていたアキラくんは、ちょっとおがたんがかわいそうな気もしましたが、「はなげのれんきんじゅつし」の登場人物について知ることができる、またとない機会だと思って、黙って見ていることにしました。








 およそ3分後。

「なんか、かわいくない。こんなの、しゃおめいじゃない」

 黒い油性ペンで、顔も身体も無造作に塗られたおがたんを床の上におろし、ヒカルちゃんは、がっかりしたようにため息をつきました。

 精も根も尽き果てて、真っ白な灰(←注:拙作「巧言令色鮮矣仁」参照)どころか、白黒のブチになったおがたんの眼鏡の向こうには、何か光るものが見えます。

 アキラくんは、こんなことなら、おがたんを助けてあげればよかったかな、と思いましたが、よけいなことを言って恨まれるのも不本意だったので、やっぱりただ黙って見ていることにしたのでした。
 



                                  強制終了


 



 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさいーーーーーっ!

 はがれんファンの方、もし見てたら、ほんとにごめんなさい(陳謝)。

 はがれんを知らない方は、「なにこれ、つまんない」と思われたことでしょう。

 ……いや、知ってる方にも、つまらんか。

 何度も言いますが、がびは、はがれんが大好きです。

 読み始めたのは、11巻が出た頃からですけど。←あいかわらず遅い

 碁会所のお客さんが、ものもらいだとかで眼帯をしてて、そこから思いついたネタです(苦笑)。



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