国際福祉機器展に行ってきましたよ。 



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 数年ぶりに、国際福祉機器展に行ってきた。
 職業上は中間ユーザー。
 プライベートにはエンドユーザー。
 そのわりに、この手の話には、あまり熱心ではない自覚がある。

 それはともかく。

 200だか300だかの企業が、自分のところのユニークな製品を、どどーんとアピールするというのが、このイベントの主旨である。
 それらの製品を使うのは、誰か。
 身体に不自由なところがあって、そういう便利なものを使いたいと思っている人たち?
 うん。
 そうだと信じて、のこのこ出ていったんだけどさ。

 展示されているもののほとんどが、介護(もしくは介助)する側のひと向けの製品だったよ。



 介護用品が、一大市場になっているのを目の当たりにしたっていうのかしら。
 高齢者施設向けの浴室ユニットやら、キャタピラタイプの昇降機やら、電動で対位交換を楽にできるベッドやら。
 それから、乗り降りの楽な自動車。
 あくまでも、助手席か後部座席に乗るのが前提で、「運転する方が障害者というケースは、ショールームで個別に御相談にのらせていただきます」だってさ。

 風呂に入れてやる、階段を上り下りさせてやる、寝がえりさせてやる、クルマに乗せてやる。

 そんなのばっかりで、「本人が自分でできるように工夫する」という視点で物を作っている会社が、ほとんどない。
 たまにあったとしても、カラフルな杖だとか、装飾のきいた手すりだとか。
 今さら、ちっとも珍しくない。
 ……っていうか、障害者本人向けの製品を作ってる企業だって、たくさんあるのに、知ってる会社も未知の会社も、全然出展してないじゃん。
 なんなの、いったい。



 たしかに、老老介護だとか、介護疲れだとか、それで心中未遂で殺人容疑だとか、そういう話は、重要な社会問題になっている。
 介護する側の負担をなくそうというコンセプトを否定してはいけないだろう。

 だけどさー。
 本人が、もうちょっとうまいこと動けるようになれば、そもそも介護負担ってのは軽減されるでしょ。
 我々、リハビリテーションの現場(がびちゃんは作業療法士だよ)が目指すところは、「本人のできるかぎりの自立と、介護者の介助量軽減」なんだから、そのへんを汲んで、モノを作ってほしいわけよ。(…………ただ、うちの同業者協会の出展ブースも、よそのことをとやかく言えないくらいにお粗末(チラシ置いて、エンドレスでビデオ流してるだけ)で、恥ずかしくて陣中見舞いもできなかったんだけどね)

 本人への働きかけと、福祉機器市場との間に、いつのまにか、暗く深い溝ができてしまったようで、とても残念。

 本人と企業の間にいるのは、家族だ。
 キーパーソンとも呼ばれているな。
 この立場にいるひとが、福祉機器メーカーのビジョンに、ほいほい踊らされているあいだは、この傾向は変わらないだろうね。



 がびが、後進に口を酸っぱくして言っていることのひとつに、「介護ではなく介助が大事」というのがある。
 似たような言葉だが、ニュアンスとしては、前者は「いたれりつくせり」で、後者は「必要な部分だけ」といったところだろうか。
 本人の「できる喜び」と、手伝う側の「負担は最低限」を可能にする、一石二鳥な考え方だと、常々思っている。

 ほとんど何もできない重度な障害をもつひとは、実は、ごくわずかだ。
 本来ならば、大きな市場にはなりうるはずがない。
 ただ、そういうひとを介助するための道具は、障害の軽いひとに対しても便利に使えてしまうというところに、落とし穴がある。
 これは、想像ではなく、事実なので、疑ってかかる必要はない。

 加齢にともなって、ちょっと動きが危なっかしくなった程度のひとでも、自分でなんでもやろうとするのをのんびり見守っているよりは、さっさと手伝ってしまったほうが早いし、まったく動けないわけではないから重労働というわけでもない。
 そんな甘い誘惑に勝てる介護者(施設職員も家族も)が、どれだけいるだろう。
 そこそこいるなら、福祉機器メーカーも、もうちょっと着眼点を変えてるんじゃないかな。
 これに関しては、単なる想像だけどね。

 そんなこと、言われなくてもわかってるわよ!
 介護の現場はいつも人手不足で時間との戦いで、悠長なことしてられないのよ!
 ……というお叱りの言葉が聞こえてきそうだ。
 でも、気持ちと理由はともかく、どうやって介護・介助しているのか、実際の状況をぜひとも御教授願いたい。
 がびの想像と大きく異なっていたら、伏して詫びよう。←エラソーだな

 キツキツな介護現場を見越して、企業が製品開発をしているのだとしたら、責められるべきは、国家予算を決めるひとたちだ。
 そのひとたちを選んだのは、我々有権者だから、同罪だと言われても文句は言いにくいけれど。

 介護職員3人の一年分の人件費で、何十年も使える便利な機材が設置できるとなれば、施設経営者は、当然そちらを選ぶだろうし、在宅介護にあたっている家族も、その恩恵を受けるべく、さまざまな施設利用サービスに飛びつくに違いない。
 マルチに活躍してくれる3人ではなく、一つの機能しか持たない機材を導入することを選んだ時点で、その施設の先は見えている。
 気がつけば、人手不足が蔓延し、機材の扱いと全介助の要領のよさに長けた介護スタッフは増えても、介助技術の熟練には結びつかなくなっていた、と。
 職業柄、いろんな施設の現場を見せていただいているが、どこも似たり寄ったりだ。
 プロって、なんだろうねって問いたいよ。



 さて、話がそれたが。
 今日の会場には、元気に動ける車椅子ユーザーが、ごろごろ来ていたが、前述の通り、企業側のターゲットは、残念ながら彼らではない。
 彼ら(がびも含めて)がたむろしていたのは、車椅子メーカーのブース。
 新製品の試乗くらいしか、楽しみなんかなかったもんな。
 みんな、最初から、そのつもりで来ていたらしい。
 同じ車種(?)のよしみで、ずいぶん長いこと話し込んだ。

「病院にいたときに、センセー(作業療法士)に作ってもらったやつ(自助具)が、一番よかった」←携帯電話のボタンを押すための短いスティック
「オレら向けのは、あんまり出ない(売れない)から、わざわざカネ払ってまで、こういうとこには宣伝に来ないんだよ」←手動運転装置のメーカーの話
「ぜんぜん売ってないから、ネットで調べて見つけた宮城県のメーカーに頼んで、写メで特注してる」←がびも使ってる「ウィッシュ(古)」なグローブ←これは、そのひととがびしか知らなくて、質疑応答が活発だった

 そんななかで、出てきた話題に、こんなものがある。

「福祉ってのは年寄りのためのもんか? あいつらは、あれでフツーだろ」

 保健・医療・福祉。
 病気のひとに必要なのが医療で、高齢者も含めて年齢相応なひとに必要なのが保健で、年齢本来の活動に制限を強いられるひとに必要なのが福祉だよ。
 年寄りの「年齢相応」ってのに幅がありすぎるから、解釈がおかしなことになってるみたいだけどね。

 そう答えておいたけど、あながち間違ってないんじゃないかなと思う。
 

 
 

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