キリ番リクエスト・リレー小説

「がびきゃっと、愛の物語 IN 北斗杯」

「起」の章・ココさまより


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 ボクの生涯のライバルをモデルにした物語が、漫画雑誌に掲載された。

 平安時代に非業の死を遂げた棋士の幽霊に導かれて、初心者だった彼が院生になり、やがてプロ棋士となる。

 その後、幽霊棋士との別離を経験し、精神的に大打撃を受けながらも、碁を続ける決意を固め、ボクという生涯の伴侶…いや無二のライバルを得る。

 国際棋戦である北斗杯への出場を果たし、彼が碁の道を進み続ける理由を再認識したところで、物語は終了。

 碁界の新しい波を世界に意識させるには、北斗杯は最高の舞台であり、そこで物語が結末を迎えるというのは、お決まりの手法といっていいだろう。



 当初は、その漫画を荒唐無稽なサクセスストーリーだと思っていた。

 碁をおぼえてからプロになるまで約2年弱という驚異的なスピードの裏には、こんな秘密が隠されていたのだ…という、漫画製作者のたくましい想像力によるフィクションなのだろうと。

 それまで漫画雑誌など読んだこともなかったが、出会った頃からいつかモノにしたいと思っていた…いや惹かれていた彼をモデルにした物語だと聞いて、つい、毎号買っては読みふけってしまった。

 そして、実際の彼の様子にぴたぴたとあてはまる符号の数々に、ボクは確信した。

 誰よりも彼を見て、彼に追われてきたボクだからこそわかる。

 これは、ノンフィクションだ。

 いつかボクには話すと約束してくれた秘密を、彼が漫画製作者に話したとは考えにくいけれど。

 二次創作というジャンルの書き手でさえ、その妄想…いや想像力は、人並みはずれていると聞く。

 ましてや、プロの作家であれば、想像をもとに、事実に近い物語を作りあげることも可能なのかもしれない。

 ただ、ボクにとっては、彼の口から聞く言葉だけが真実。

 彼の言う「いつか」という日を、ずっと待ち続けるつもりだ。



 最終回の掲載が終わり、単行本の最終巻も発行されて久しい。

 漫画製作者の取材攻撃や、漫画を読んで棋院に押しかけるようになったにわかファンから開放されて、ようやく、彼の周囲はもとの静かな環境に戻った。

 だが、再び北斗杯の予選の時期が迫っていた。

 今年も、ボクはシード枠で選手に決定している。

 彼はまた、予選からスタートだ。

 予選が終わるまで碁会所には来ないと言い出したら、去年の悪夢の二の舞だ。

 先手必勝。

 クリスマスを直前に控えた夜の舗道で、ボクは積年の思いを彼に伝えた。

 ボクからの愛の言葉に、彼は頬を赤く染めて、「オレも…」と小さくつぶやいた。

 ロマンチックにライトアップされた街の灯りに後押しされるように、ボクは、うつむいた彼の顔をそっとあげさせ、ボクたちは初めてのキスをした。



 あれから4ヶ月と12日。

 16歳という思春期真っ只中にありながら、純情で恥ずかしがりで淡白な彼のおかげで、ボクたちは未だにキス止まりの関係だ。



               *          *          *



 今年も北斗杯の選手になれた。

 塔矢のヤツは、今年もシードだかなんだかで、最初っから選手に決まってやがった。

 オレも、なんとかってゆー漫画のモデルになって有名人になったんだから、シードになってもいいのに。

 今年も二次予選どまりだったからなー。

 しょーがねーか。

 そーいや、あの漫画、なんか恥ずかしくて読まないでいたら、いつのまにか終わってたな。

 オレなんかがモデルじゃ、やっぱウケなかったのかな。

 ま、いーけど。

 もうひとりの選手は、今年も社だ。

 去年とおなじように、塔矢んちに泊まり込んで、2泊3日の合宿をやった。

 今朝、オレだけ先に家に帰って、スーツに着替えてきたのも去年とおんなじ。

 ただ、去年と違うのは。

 オレと塔矢が、いわゆる「おつきあい」をしているってことだ。



 ずいぶん前に、あかりに「ヒカルは気になってる人いないの?」って聞かれたことがあった。

 オレは速攻で「塔矢アキラ」って答えた。

 あかりのヤツ、「碁とは関係なしで!」なんて怒ってたな。

 だけど。

 うまいラーメン食ったら、塔矢にも食わせてやりたいなあって思ったし。

 値段の割にネタのいい回転寿司を見つけたら、今度塔矢と来たいなあって思ったし。

 マックの割引券に「5名様まで有効」って書いてあったら、和谷とか伊角さんより先に塔矢の顔が浮かんだし。

 碁に関係なくても、オレが気になってるのは塔矢アキラだったんだ。



 その塔矢に、いきなりコクられた。

 年末年始だったかな。

 なんか、あっちこっちに電球がしかけてあったから、クリスマス頃だったかもしれない。

 正直、まさかと思った。

 オトコ同士だし、ありえねーって思ってたから。

 塔矢って、恋愛とかそーゆーのに興味なさそうじゃん?

 まあ、オレも、塔矢のことが気になるっつーくらいで、別につきあってほしいとか思ってたわけじゃねーけど。

 そしたら、塔矢のヤツ、いきなりキスしてくるんだぜ///

 びっくりしたあ…。

 あのヤロー、オレより進んでやがんの。

 きっと、ひとりえっちとかもしてんだぜ。

 オレだって、そのうちなあ…。



 ……ええっと、その。なんだっけ。

 ああ、そうだ。

 合宿だ。

 塔矢のヤツ、社がいるってのに、いちゃいちゃしようとしやがってさあ。

 社がトイレに行ってる隙に、急に抱きついてきたり、キスしてきたり。

 徹碁のはずなのに、社が居眠りしちまって…ってゆーか、爆睡してたけど。

 そしたら台所に連れてかれて、べろちゅーされた///

 あーゆーのって、もっとオトナがやるもんじゃねーの?

 オレらには、ちょっと早くない?

 口から酸素持ってかれそうで、窒息するかと思った。

 実際、マジで酸欠っぽくなって、くらくらしたもんな。

 でもさ。

 塔矢に抱きしめられてキスされるのって、悪くねーんだよなあ…。



 おっと、いけね。

 もうすぐ集合時間だ。

 ホテルに泊まる手続き…チェックイン?ってヤツをしとかなきゃ。

 去年も来たから、どこに行けばいいかは知ってるし、大丈夫…だよな。

 ……と思ったら、なんだ。

 塔矢と社、もう来てるじゃん。

 また去年みたく、塔矢んちからタクシーで来やがったな。



               *          *          *



「おはよう、進藤」

「おはよ、塔矢。社も」

「遅かったじゃないか。心配したんだよ」

「間に合ったんだから、いいじゃんか」

「キミのぶんもチェックインをすませておいたよ。はい、これがキー」

「お、さんきゅ」

「今年もまた、ボクたちの部屋は隣どうしだよv」

「よっしゃ。じゃあ、夜中に行くよ。オレ、期間限定のおやつ買ってきたんだーv」

「それは楽しみだな。でも、寝る前には、ちゃんと歯みがきしなくちゃダメだよ」

「へっへーだ。わかってるって」



 ……なにがおはようや。

 さっきまで一緒におったやんか。

 しかし、塔矢のヤツ、えらいまあアイソのええこって。

 1ヶ月ぶりに飼い猫に会うたアホ飼い主みたいや。

 歯ぁから光がこぼれとるわ。

 気色わりぃやっちゃ。

 それに、進藤。

 お前もお前や。

 なんやねん、その社「も」ちゅーのんは。

 だいたい、幼稚園のガキやあれへんねんで。

 夜中に菓子食い散らかす約束なんかすんなや。

 こいつら、デキとんのちゃうかおもとったけど、この1年のあいだ、なーんも進んでへんみたいやな。

 塔矢が進藤に迫ってんねやろけど、おこさま進藤相手に、塔矢も悪戦苦闘気味なんやろな。

 こいつらのセリフ見とったら、ようわかる。

 塔矢と進藤で、「v」の使い方が違いよるわ。

 合宿中も、塔矢のヤツ、オレが気づいてへんおもてキスしてんねやろけど、進藤が赤うなってこっち気にしとったさかい、バレバレや。

 この北斗杯のあいだに、オトナの関係になれるように、陰ながら応援しといたるわ。

 がんばり。

 



「起」の章・ココさまからのご提案

*原作終了から1年後の北斗杯会場のホテル。

*つきあいはじめたばかりのアキヒカ(もしくはアキヒカ子)。



北斗杯といえば3人組。ヒカルとアキラと…やっぱりキヨさんかなあと、社を出しちゃいました。

昔のお師匠さんの口調を思い出して書いてみましたが、非常に嘘くさいです。

つっこみ大歓迎! ご教示いただけましたら、すぐに修正しますv




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