B  ギャザーへのこだわり

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 いきなりですが質問です。

 どちらがスタイルよく見えますか?


      

 ちなみに、左側(黄色いコルセット帯のほう)のトルソーは、B96cm・W98cm・H110cm。右側(赤い矢羽根帯のほう)のトルソーは、B85cm・W69cm・H88cmです。

 どちらも拙グループの作品ですが、シルエットが全然違いますよね。

 右側の少々地味な浴衣ドレスに御注目ください。

 これは、市販の浴衣をリメイクしたチェアウォーカーさん向けの試作品で、スカート部分は、数年前に発行された「手作り服応援雑誌」の付録型紙を使用して作ったものです。

 正直に経緯を申しますと、生地の裁ち方を間違えてしまって、自作型紙のとおりには作れなくなってしまったため、「プロが作った型紙を使えば、いい感じに修正できるはず♪」と、市販の型紙をひっぱり出してきて、裁ち直したわけです。

 ところが、結果は御覧のとおりです。

 もともと細いサイズのトルソーですから、ウエストまわりは、キュッと引き締まっていますが、気になる下腹部からヒップにかけてのラインが悲惨極まりないことに。せっかくのスリムなトルソーが泣いてます。

 はっきり言って、胴長の下半身デブそのもの。
 こんなの、うちでは売れません。

 チェアウォーカーさんは座っている姿勢が基本ですから、風でスカートがめくれるのを防ぐために、ギャザーの広がりは控えめに作るつもりでしたし、筋肉が少なくてほっそりしてしまった脚をフォローするための長さとふんわり感は出したいと思っていましたが、これは、ちょっとひどすぎです。

 いろいろな乗り移りの際には、立ち上がったり、おしりを浮かせたりもします。トイレのなかだけならまだしも、レストランの席や自動車への乗り移りの際には、心配そうな視線を向けられることが多いので、立った時のシルエットにも気を抜けないんです。

 健常者のみなさんや、杖歩行をなさる方なら、なおさらですよね。





 ティアードスカートのギャザーは、一度広がり始めたら、下の段にいくにつれて、同じかそれ以上の広がり方にならなくてはいけません。

 上の段よりも下の段の方が広がり方が少なかったら、裾が広がらないバルーンシルエットになってしまいます。

 下の段の生地のほうが長くなっていればいい、ということではありません。

 たとえば、1段目が1mで2段目が2mだとすると、2倍のギャザーが寄っている計算になります。

 3段目を3mにすると、確かに2段目よりは生地の量が増えてはいますが、ギャザーの寄り具合は2段目の生地の1.5倍……つまり、広がり方が少なくなっているんです。

 理想的なラインを追求すると、ウエストの高さでは1mほどで済む生地の量が、裾では4mにも及びます。

 作り手としては、「4m必要なところを3mで済ませられないかなあ」という気持ちになりがちです。悪魔のささやきとの戦いです。

 この悪魔のささやきに負けて、その罪ほろぼしのように、「裾で節約したぶん、ウエストまわりのギャザーをたくさん寄せてサービスしておこうっと」なんていうことを実行したら、もう目も当てられません。

 一番気になる下腹部からふとももにかけてのデンジャラスゾーン(?)が、見事に膨張して見えてしまうんです。

 右側の画像の浴衣ドレスは、まさにそれを物語っています。

 今回の失敗をもとに、物理学の言葉を使って格言を作ってみました。

「ティアードスカートのギャザーに、マイナスの加速度を生じさせてはいけない」

 わかっていたつもりだったんですけどねえ。

 まだまだ修行がたりません。





 絶望的な裁ち間違いから不死鳥のように復活を果たし、ロフストランドクラッチユーザーさん仕様に変更できないものかと、試行錯誤をくり返しましたが、右側の画像の浴衣ドレスは、パーツ取り用のジャンク品に決定です。

 仕方がないので、同じ柄の浴衣をもう一着買って、ロフストウォーカーさん向けの「魔法のティアードスカート仕様の浴衣ドレス」を作ることにします。

 …………生地から作ったほうが安いってば。

                           おそまつさまでした