村すずめ様、ごめんなさい。

  白猴子 白いさるぼぼのおがたん

   お戻りの際は窓を閉じてください






 飛騨の国には、さるぼぼの村があります。

 真っ赤な顔に、真っ赤な身体。

 ふっくらとしたおなかと、先のとがった小さな手足が愛らしい、猿の赤ちゃんのようなお人形さんたちの村です。



 さるぼぼの村には、たくさんのさるぼぼが暮らしています。

 真っ赤な顔には、目も鼻も口もありませんが、みんな心で会話ができるのです。



 真っ赤なさるぼぼたちのなかに、ひとりだけ白いさるぼぼがいました。

 名前は、おがたん。

 真っ白な顔に、真っ白な身体。

 目も鼻も口もあって、おまけに眼鏡までかけています。



「やーい、やーい。仲間はずれのおがたんやーい」

「そんな気味の悪い、なまっちろいヤツなんかと、遊んでやるもんかー」



 おがたんは、いつもひとりぼっちでした。

「どうして俺は赤くないんだろう。どうしてみんなと違うんだろう」

 みんなが楽しそうに遊んでいるのを、おがたんは、眼鏡の奥の寂しそうな瞳で見つめるのでした。



 ある日。

 おがたんは、旅に出ることにしました。

「この広い世界のどこかに、俺の身体を赤くしてくれる、魔法の薬があるはずだ!」



 おがたんは、さるぼぼの村を離れ、飛騨の山々を越え、遠い東の国へとやってきました。

 長旅に疲れたおがたんは、ゆっくりと休めるところを探していました。

 すると、どこからか、こどもの歌声が聞こえてきました。

「赤いクレヨンしゃんで塗れば、なんでもまっかっか~♪」

 今まで聞いたこともない、奇妙な音階の歌でしたが、その歌詞に、おがたんは自分の耳を疑いました。



「なんでもまっかっか…だと?」

 おがたんは、歌声のするほうへと吸い寄せられていきました。

 その歌声は、大きなお屋敷のなかから聞こえてくるようです。



 おがたんが、窓のすきまから様子をうかがうと、男の子と女の子が絵を描いているのが見えました。

 ふたりは、白い紙をみるみるうちに赤く塗りつぶしていきます。

「あれだ! あれこそ、俺の求めていた魔法の薬…!」

 おがたんは、夢中で部屋のなかに飛び込みました。



 女の子の手から魔法の薬を奪い取ると、おがたんは宙に舞い、くるくると喜びの踊りを踊りました。

「これで、俺も赤いさるぼぼになれる♪」



「あ、白いこいびとしゃんだ」

「違うよ、ヒカルちゃん。それを言うなら、白いこびとさんだよ。ほら、白雪姫のお話に出てくるじゃないか」

「しょっか。アキラくんはものしりだねー」



 おがたんは、自分が北の国のお菓子や、西洋のおとぎばなしの脇役に間違えられていることなど気にもとめず、くるくると踊り続けました。



「ねえ、こびとしゃん。なにが、しょんなにうれしいの?」

 ヒカルちゃんが不思議そうにたずねるので、おがたんは踊るのをやめて答えました。

「決まってるだろう。この魔法の薬で、俺の顔も身体も、真っ赤に染めるのさ」



「魔法の薬? それはクレヨンだよ。身体になんか塗れないよ」



 真実とは、時にひとを傷つけるものです。

 おがたんは、がっくりと肩を落とし、赤いクレヨンをヒカルちゃんに返しました。



「しぇっかく白くてきれいなんだから、しょのままでいいじゃん。ねー、アキラくん」

「うん、ヒカルちゃんの言うとおりだよ。その眼鏡と白い服、とっても似合ってるよ。なんだか…知的な感じもするし」

 アキラくんは、本当は、「なんだか胡散臭いけど」と言うつもりでしたが、あんまりおがたんがしょんぼりしているので、言うのをやめたのです。



「知的…か。そうか…そうだな。それじゃあ、これからは頭脳系のおがたんでいくとするか」

 立ち直りの早いおがたんは、「くっくっく…」と含み笑いを見せました。



「じゅのーけーって、頭をちゅかうこと? しょれだったら、囲碁がいーよ。アキラくんは、頭がいいから、囲碁もちゅよいんだよ。ヒカは頭が悪いから、囲碁はやんないのー」

「頭の良し悪しは関係ないよ。ヒカルちゃんだって、きっと強くなれるよ。……まあ、囲碁が頭脳ゲームだっていうのは、本当かもしれないけど…」

 アキラくんの言葉は、ヒカルちゃんがちょっぴりおバカさんなことを表していましたが、誰もそのことには気がつきませんでした。



「囲碁…。ふむ、囲碁か。……考えておくかな」

 おがたんは、そう言い残すと、窓の外へと飛び立っていきました。



 その後。

 さるぼぼの村で、おがたんは囲碁のタイトルを取りました。

 顔や身体が白いからといって、おがたんを笑う者は、もう誰もいません。



 おがたんの将来の夢は、世界選手権で優勝すること。

 世界選手権は、世界中の猛者が集まる大会です。

 プロもアマも関係ありません。



 もちろん、さるぼぼだって出場できるのです。

 ……前例はありませんけどね。


                                     おしまい



  緒方さんは赤いクレヨンを届けてくれたのか、それとも奪い取ったのか。

  このバカ文は、そこから始まりました。

  そして、あのプリティな手足v

  まさに、さるぼぼチック♪

  ……ほんとに、ほんとに、ごめんなさい(滝汗)。




  2005年5月12日


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