イベント参加時の無料配布本を全文使い回し
『U・H・P』 ー日本棋院の七不思議ー
| UHP 【ゆー・えいち・ぴー】 「嘘八百」の頭文字を取ったもの。 書簡や記事などの内容がフィクションの域を大きく逸脱し、誰の目にも捏造であることが明らかになった状態を表す。 赤文字で表記した場合、「真っ赤なウソ」という意味になる。 社会での認知度が極めて低い表現であるため、使用には慎重を要し、とくに、同人誌のタイトルへの使用は控えることが望ましい。 がびがび雑学辞典第二版第4刷(増補)1192ページより抜粋 |
| 第四回 「驚愕! 人面壁の謎!」 我々日本棋院会館の怪奇現象を追う特捜班は、会館の二階に、人間の顔が浮かび上がる壁が存在することを確認した。 壁の一部が、縦25センチ・横19センチに渡って変色し、目と鼻と口が、はっきりと見て取れる。 この人面壁が表す人物に関して調査を進めてみたが、現存する資料からは、具体的な人物を特定することはできなかった。 見る角度によって、その表情は異なるが、怨嗟に歪められたかのような眼差しや、今にも悔恨を語り始めそうな口元など、いずれもマイナス感情を露にしているという共通点がある。 その壁の在り処が、対局場の出入口のすぐ近くであることも気になる点だ。 この壁に残された思念は、現代の打ち手に、何を訴えかけているのだろうか。 「本当だ! すげえっ!」 「ここが目で、ここが口で……。確かに、顔に見えるな」 「やだぁ。気持ち悪い」 棋院会館の二階に、人だかりができている。 「あの雑誌、めずらしく真実を報道してるじゃん」 「ああ。K・Yのおっさんにしちゃあ、めずらしいな」 携帯電話のカメラのレンズを壁に向けながら、棋士たちは、K・Y氏を称賛した。 「…………どうする? 真犯人さんよ」 黒山の人だかりを遠巻きに眺めながら、和谷義高がドスのきいた声で尋ねる。 せっかく低い声音を作っても、笑いをこらえて震えてしまっては台無しだ。 「どうもこうも…………ボクに、どうしろって言うんだ」 憮然とした表情で答えるのは、和谷曰く「真犯人」のアキラだ。 「もとはと言えば、おまえが壁に大穴を開けたせいだろ?」 「穴なんか開けてない! 第一、ちゃんと塗り直してもらったのに。どうして今さら……」 言われてみれば、そこだけうっすらと色が違うのがわかるその壁を、アキラは、遠目で睨みつけた。 もう何年も前の話だが、アキラは、己の激情に突き動かされるまま、棋院会館の壁を拳で殴りつけたことがあった。 棋院会館の壁は、石膏ボードにビニールの壁紙を貼っただけの安っぽい仕上げではなく、コンクリートの構造壁を室内用ペンキで塗装した、頑丈な造りである。当然、素手で殴ったくらいで穴が開くわけはないが…………塗装にヒビは入った。 「若獅子戦のときだっけ? 進藤のヤツが来なくって……。それでブチ切れて、ガツンとやっちまったんだよな」 「〜〜〜……」 「おまえ、あの頃から、進藤しか見えてなかったもんなあ」 「…………///」 アキラは頬を染めて、ただ黙ってうつむいていた。 第4話 完 |
2008年6月のイベントで配布した無料本のリサイクルです。
2009年2月14日