イゴの日事変
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1と5で、「イゴ」の日。
拙作「みっつのねがいごと(R15)」を読まれた方はもちろん、そうでない方も、よくご存知だろう。
ゴロあわせと年始という日付の偶然性が複雑に絡みあった結果……いや、単純なノリだろうが、必然的に、毎年1月5日には、打ち初め式が開催される。
その打ち初め式に行ってきた。
ほぼ10年ぶり。
私事ながら、前回行ったときは、教養学部の語学講師兼研究室の助手という中途半端な職に就いたばかりで、夢を叶えた棋士たちの姿を、悔しい思いで眺めていたものである。
悟りきった人間とは遠くかけ離れたがびのこと。
プロの囲碁界には見向きもせず、アマチュア碁界で井のなかの蛙として、ゆるく生きてきたのだが。
参謀AQ氏に誘われて、久しぶりに出向いてみたというわけである。
前日は、仕事で帰宅が遅くなることがわかっていたが、「根性で来い」という参謀からのメールに脅されて、気合いで早起きして、ちゃんと予定通りの直通電車に乗って市ヶ谷へと向かった……が。
参謀遅刻。
参謀を待つあいだ、ホームで朝食を摂ることにした。
地元駅のコンビニで購入したものの、ちょっと電車が混んでいたため、食べるのが恥ずかしかったおにぎりだ。
心臓破りの坂(自力じゃ上れない勾配のスロープ)の前で、3.2号機に座って、おにぎりを食う。
具は「焙り焼たらこ」。
ちょっと高級具材っぽいよな。
駅員さんが、めいあいへるぷゆー…とばかりにこちらを見ていたが、さすがにホームでおにぎり食ってるババアに声をかける勇気はなかったようだ。
15分ほど遅れて、参謀登場。
会場である日本棋院会館の2階へ向かうと、ものすごい人ごみだったが、幸い空席があった。
らっきーらっきー♪
エライ人の挨拶や表彰も終わっていて、これまたラッキー。
やがて、プロとアマが交互に打つ連碁が始まった。
解説や聞き手に、売れっ子棋士をもってきていて、サービス満点だ。
打つ順番が周知されていないのか、次の番の打ち手がなかなか現れないことも、ままあった。
解説で場を盛り上げようにも、まだ序盤であるためネタが不足し、間がもたなくて困っている様子がおもしろかったと言ったら気の毒だろうか。
数十手打ったところで打ちかけ。
この言葉には「中断」という意味もあるが、ここでは「途中のままで終わる」という意味で使われているので、念のため。
誰が見ても白が優勢ではあるが、プロアマアマプロ…の順に交互に打つため、ヨセたあとの形まで読むのは無理だ。
お正月のご愛嬌だろう。
形勢判断とヨセに定評のある棋士の鶴の一声で、引き分けと相成った。
その後、地下の囲碁殿堂を見てから、3階の一般対局室へ移動。
参加者に無料でフロア全体を解放していた。
珍しく太っ腹だな、日本棋院。
それぞれ勝手に打ち初めをやれということらしい。
参謀の友人の棋院職員vs参謀&がび組という、変則的なペア碁を一局。
途中まで白優勢で進んでいたが、いろいろと目からうろこな打ち合いが続き、 結果は、黒を持った職員さんの三目半勝ち。
駄目を打って一目もヨセてなかったり(しかも後手引いてるし)とか、コウを争ってるはずなのに明後日なとこに打ってみたり(しかも小さいとこ)とか。
長考のあとの会心の一手がそれですかい。
ひそかに盤面持碁を狙っていたが、大差をつけられないようにするのがやっとでしただよ。
こどもの手拍子と違って、長考後の大人の手というところが、なんとも以下略。
打ち初めというより、初笑いみたいな感じだったかな。
参謀、笑わせてくれてありがとう。←酷
職業棋士を間近に見ても、以前のような妬ましさは浮かばなかった。
自分が、そこそこ順調に社会人生活を送っているというのも一因だが、やはり囲碁好きな人たちの「今年も打つぞー」という楽しそうな表情に励まされたところが大きかったと思う。
いやあ、なかなかおもしろい時間を過ごさせてもらいましただ。
参謀、誘ってくれてありがとう。
棋院会館を後にして、市ヶ谷駅前のパスタ屋でランチ。
2階にあるその店まで、前述の職員さんに3.2号機を運んでもらう。
いやあ、初対面なのに悪いねえ。
だらだらと碁談義をして、気がつけば16時半。
職員さんと別れ、河岸を変えて、参謀とふたりで映画でもという話になったのだが。
ケータイがしつこく鳴り続けるので、うるせえなあとばかりに画面を見てみると。
夫からの不在着信13件。
なんだよ、このストーカーみたいな熱烈コールは。
しかたなく「もしもし」と出てみれば、「警察から電話があった」と、強張った声で告げられた。
ケーサツ。
日頃、あんまり縁のない機関だ。
しかも、あまり世話になりたくない種類の役所である。
泥棒でも入ったか。
それとも、マンションが火事にでもなったか。
がびさん(猫)は無事か。
一瞬のうちに、脳内にいろんな可能性がよぎったが、夫曰く、駐車場のことらしい。
「月極駐車場に契約者以外が停めていると通報があった」とのこと。
それを聞けば、心当たりがある。
朝、駅前の駐車場にクルマをとめる時、がびが借りてるスペースに、違うクルマが停まっていた。
それが、いつもとなりのスペースに停まっているクルマだったので、「ははーん、間違えやがったな、こいつめ」と思って、本来、そのクルマが停めるべき場所に、我が軽自動車を停めてきたのだ。
不動産屋に連絡しようにも、参謀との待ち合わせた電車の時間が迫っていたし。
まあ、参謀は乗ってこなかったわけだけれども。←何度も言うな
それで、ケーサツの担当者の名前を聞いて電話して、事情を話したら、「わかりました、そっちで話しあってください」だって。
ずいぶんとお手軽じゃんか。
がびの現在地は市ヶ谷駅。
すぐには怒鳴り込みには行けない。
それでも、自分で停める場所を間違えたくせに、がびを通報しやがったバカ者に文句を言うべく、ケータイのタウンページで番号を調べる。
相手は商業車。
持ち主はわかってるのさ。
意気揚々と説教モードで電話をしたのだが、相手は、「自分はいつもここに停めている」の一点張り。
するってーと、あんた、毎回、間違えて停めてるわけですかい。
がびは、月極とはいえども、月に5〜6回しか利用しないので、しょっちゅう間違えられていたとしても、気づかないのだ。
双方、主張を譲らず、確認しようにも、駐車場の管理をしている不動産屋は、正月休みの真っ最中だった。
「とりあえず、今日のところはこのままで。ワシは外出中なので、契約書類を確認できないし。後日また」と、譲歩しておいた。
まったくもう。
余計な手間かけさせやがって。
ちなみに、1月6日現在、がびの主張が正しいと判明済みである。
さて。
ようやく映画である。
この正月は、邦画ががんばっているようで、見たい洋画がない。
がびチョイスで007に決定。
でもね。
……なに、この半分ハゲた金髪のボンドは。
なんか、イメージ違うんだけど。
全力投球。
体当たり。
一所懸命すぎて痛いよ。
諜報員になってすぐの頃っていう設定らしいけど、やっぱし、カッコつけでスマートなボンドじゃないとさあ。
寅さんとか、ドラえもんとか、シリーズものってのは、お約束があるでしょう。
みんな、8時45分の印籠を、楽しみにしてるんだから。
このひと、実力派っていうか、70年代アメリカのホームドラマのお父ちゃん役にはぴったりだと思うよ。
次から、ボンド役は、別の俳優さんになるといいなあ。
ワシ的には、ろじゃーむーあ(イチオシ)とか、ちと古いが、しょーんこねりー(貫禄ありすぎて次点)が萌えだったなあ。
ストーリーの全体像がわからないまま映画は終わり(いや、監督や脚本のせいではなく、がびはいつもそうだ)、参謀に、「あれはどうなったんだ」「あのひとはなんだったんだ」と訊きながら、再度、場所を変える。
終電を気にせず語れるようにと、がびの軽自動車でファミレスにでも行こう……となったのだが、問題は、乗り換え駅。
いつも、参謀AQ氏と別れる、おなじみの駅だが、反対方向から乗り換えるのは、けっこうたいへんな騒ぎなのだ。
地下道を通って、別のホームに移動しなきゃならんのに、エレベーターもエスカレーターもない。
ものすごくゆっくり動く階段昇降機しかない。
がびが知るかぎり、たぶん日本一の遅さだね。
ぴんぽん♪ ぴんぽん♪ という、マヌケな警告音つきだし。
しかも、この駅の習慣なのか、駅員さんが3人くらいつきっきりという、赤面モノ。
まあ、しかたがないな、と、駅員さんに頼んだら。
ちょうど、この駅で折り返す始発電車に、今いるホームから乗れるという。
ほう、そんなラッキーな電車があったとは。
次から、その時間にあわせて行動するのもいいかも。
なーんて、思ってたら。
その電車、ワシと参謀と駅員さん一人を乗せただけで、発車しちゃったじゃないの。
しかも、がびんちとは反対方向に。
なになに。
なんなの、この展開は。
同乗していた駅員さんに聞いたところ、少し先にポイントの切り換え地点があって、本当の折り返しは、そこで行うのだという。
今の駅に戻ったときには、別のホームに入る、と、そういうわけだ。
なるほど。
再び駅に着いてドアが開き、今度はたくさん人が乗ってきた。
ふーん。
珍しい経験しちゃったよ。
ぴんぽんぴんぽん♪の昇降機よりはマシだけど、ちょっと恥ずかしかったかも。
終点に着いたことに気づかず爆睡してた酔客が、回送電車で車庫から戻ってきたみたいでさ。
そして、駅前駐車場へ。
がびの愛車のフロントガラスに、妙な紙切れが挟んであった。
「契約車両以外の駐車を禁止します。○○警察署」
ワシ、思いっきり契約者ですけど。
しかも、間違えたのは、おとなりさんですけど。
怒り心頭ながらも、深夜というべき時間帯。
参謀と二人、静かにファミレスに向けて出発した。
オレもオトナになったもんだ。
しばらく通らないうちに、街道沿いに新しいファミレスができていたので、そこに入った。
まだ新しい匂いがしていて、なんとなく嬉しい。
でも、店員さんも新しくて、ちょっと頼りなかった。
精進を求むってところだ。
あいかわらずの腐った話題や、サイトの2周年の話、映画の不満など、だらだらと話す。
地元のファミレスという、自分のテリトリーに戻ってくると、やっぱり落ち着く。
いいね、ファミレス。
ファミレス大好き。
でも、そろそろ眠いぜというがびの訴えでおひらきになった。
参謀を無事に送り届け、がびも帰宅。
家を出てから、実に18時間が経過していた。
打ち初め式に行っただけだったのになあ。
いろんなことがあったなあ。
ほんと、長い一日だったよ。
ちなみに。
駐車場を間違えたおバカさんからは、まだ詫びの電話もない。
1月7日 がびきゃ拝
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