ふぇありー☆てーる(5)
      
綾瀬玲菜さまからのリクエストで書かせていただきました

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 天女の羽衣は、薄手に見えて、なかなか保温性のある素材であるらしい。

 ほかほかとあたたかく、ヒカルは眠くなってしまった。

「ふわあぁぁぁ…。今日はどこで寝ようかな」

 あくびをしながらねどこを探していると、林の向こうに古い城が見えた。

「とりあえず行ってみよう」

 行き当たりばったりな行動パターンで、ヒカルは古城を目指して歩いていった。



「うわあ。とげとげだらけだ。誰か住んでるのかな」

 いばらのつるに覆われた城は、ひっそりと静まりかえっていた。

 糸つむぎの針にかけられた呪いによって、100年ものあいだ眠っていた姫は、つい先日、よその国の王子に救出されて、その国へと旅立っていったばかりだ。

 老朽化が進んで傷みの激しい城には住みたくなかったのだろう。



 だが、貧乏人ヒカルにとっては、雨風を防げるだけでも感謝すべきところだ。

 有刺鉄線のようないばらのつるをかきわけて、ヒカルは城の奥深くへと進んでいった。

 探検気分で部屋を見てまわっているうちに、ヒカルは眠り姫の寝室へとたどりついた。

 豪華な天蓋つきのベッドに、レースや刺繍がふんだんに使われた寝具を見て、少々閉口したものの、先程から襲ってくる睡魔に、もう対抗できそうになかった。

「今日はここで寝るかあ」

 ヒカルはベッドにもぐり込み、くーくーと寝息をたてはじめたのだった。






 その頃、アキラは白馬を従えてワニの背中の上を歩いていた。

「さっき、前髪だけ金髪のガキにだまされてよー、俺たちの仲間の数、結局わからずじまいだったんだ」

 と、ワニたちに懇願されたのだ。

 王家に伝わるソロモンの指輪の効果で、アキラも動物や植物と会話ができる。

 前髪だけ金髪と聞いて、アキラはすぐにヒカルのことだと思い至った。

(この川の向こうに、ヒカル姫がいる…)

 アキラはワニの依頼を快諾し、怯える愛馬をなだめすかした。

 そして、向こう岸へと渡りがてら、ワニの数をかぞえてやったのだ。



「108だったよ」

 くしくも煩悩の数と一致。

 何かの語呂合わせとも一致するのだが、ここでは敢えて触れないでおこう。

 ワニたちの謝辞をあとにして、アキラは馬を走らせた。

 林の向こうに古城が見える。

 あれこそ、ヒカル姫の住まう城に違いない…。

 多少の誤解もあるが、アキラは確実にヒカルの居場所へと近づきつつあった。






 いばらのつるは、アキラが姿を現すやいなや、するすると道をあけていった。

 運命の王子さまに対するお約束といったところか。



 王子であるアキラにとって、姫の部屋のありかを探す必要はなかった。

 城の構造など、どこも似通ったものなのだ。

 アキラは、ヒカルの眠る寝室のドアをノックした。

 ……返事がない。

 アキラは静かにドアをあけた。

 ベッドがこんもりとふくらんでいて、その山がゆっくりと上下に動いていることから、そこでヒカルが眠っているのだと推測する。

「ヒカル姫…?」

 ベッドに近づき、そーっと声をかけてみる。

 いた!

 くーくーと幸せそうな寝息をたてて、生まれたての天使のような無垢な寝顔を、無防備にさらしている。

 アキラの喉がごくりと鳴った。

 横たわるヒカルの身体の両側に手をつき、うすくあけられたままのヒカルの口もとに、自分の顔を近づける。

 ちゅv

 ほんの一瞬の接触ののち、アキラは唇を離した。

 やわらかく甘いその感触に、もうアキラはいてもたってもいられなかった。

「ヒカル…」

 アキラは再び唇をあわせた。



 ちうううううぅぅぅぅ……

 明らかに情欲がこめられた生温かい濡れた感触に、ヒカルは驚いて飛び起きた。

「うわあああぁぁぁーっ!」

 身を起こしたヒカルを、アキラは再びベッドの上に沈める。

「やっと会えたねv」

「お、おま、おまえ…アキラ!? い、いったい、どこからわいてきやがった! それに! なんでオレを押し倒してんだよ!」

 ばたばたと身をよじるヒカルを腕のなかに閉じ込め、アキラはヒカルの頬にキスをした。

 一見ひ弱そうな王子さまだが、実はなかなかの体力自慢だったりする。

「順不同ですまなかったね。ヒカル姫、ボクと結婚してください」

「け、けっこんーっ!? ってか、そのヒカル姫ってなんだよ、姫って。オレは、オレは…」

 アキラのプロポーズに驚きながらも、ヒカルは自己主張を忘れなかった。

「オレは、オトコだああぁぁぁーっ!!」



 ヒカルの叫びから5秒ほど経過しただろうか。

 アキラはにっこりと微笑んで、ヒカルの着衣に手を滑り込ませた。

 誰にも触れられたことのない大事な部分に、そっと手をのばす。

「ほんとだ」

 自分の手に伝わる、確かな感触に、アキラはうなづいた。

 やれやれ誤解がとけてよかったと、息をついたヒカルに、アキラはさらに覆いかぶさる。

「ちょ、ちょっと待て、こら! おまえ、なにしてんだよ!」

「キミがオトコだからって、ボクたちの将来に、なんの問題があるっていうんだい?」

 アキラのキスから逃れながら、ヒカルは言い訳を考えた。

「だって、おまえ、王子さまだろ? 跡継ぎはどうすんだよ。オトコ同士じゃ、こどもはできねーんだぞ」

 ヒカルの言葉に、アキラは艶然と微笑む。

「大丈夫だよ。男の子が欲しくなったら、川へ洗濯に行けばいい。女の子が欲しくなったら、竹やぶへ行けばいいんだから。チューリップの花のなかには、もっと小さな女の子もいるよ」

 ヒカルはあいた口がふさがらない。

「そんなわけだから、ボクたち結婚しよう」

 一緒に暮らせば、いつでもふたりで碁が打てると囁かれて、ついにヒカルは堕ちた。



 アキラに剥ぎ取られた羽衣が、室内をふわりと舞う。

(忘れ物預かってますって張り紙出しとかなきゃな)

 ぼんやりとそう思ったところで、ただでさえあまり役に立たないヒカルの思考回路は途絶えた。


 こうしてヒカルは、アキラにおいしく食べられてしまったのだった。






 翌日。

 一頭の馬になかよくまたがり、ふたりはアキラの両親の待つ城をめざして出発した。

「いてっ。いてててて…」

 馬が一歩進むたびに、ヒカルはその振動に顔をしかめる。

 そんなヒカルの顔を、アキラは心配そうにのぞき込む。

「もう当分はなしだからなっ!」

「そんなあ。……慣れれば、そんなに痛くなくなるらしいよ。毎晩すれば、すぐに慣れるさ。だから…ねv」

「ま、毎晩…って///」


 ぱかぽこ ぱかぽこ

 白馬の蹄の音が響くなか、アキラはそっとヒカルに口づけた。






        おとぎばなしの例にもれず

       「ふたりはいつまでも幸せに暮らしましたとさ」

                            めでたし めでたしv




ラストを飾るのは「眠り姫」。眠れる森のヒカルでございますv

綾瀬玲菜さまからのリク内容は

   
*おとぎばなしのなかのアキヒカ

   *アキラが王子さまで、ヒカルがお姫さま

   *でも、ヒカルはオトコの子

   *おとぎばなしは1ダースぐらい引用してねv


でした。最初のリクとはだいぶ変わりましたなあ…。

玲菜さまの底知れぬアイデアの泉に振りまわされ導かれて、こんな物語ができあがりました。ここまでのプロセスはこちらでバラしております。よろしかったらご覧くださいませ。


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