キリ番リクエスト・リレー小説
「がびきゃっと、愛の物語 IN 北斗杯」
「結」の章・イミヤさまより
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なーんだ。 ここに来てたんだ、塔矢アキラ。 道理で、どこを探しても見つからないわけだ。 それにしても、へんだな。 塔矢はともかく、どうして倉田さんと楊海さんまで一緒にいるんだろう。 もしかして…進藤がお酒飲んでたことがバレちゃったのかな。 それで大人な倉田さんと楊海さんが、酔っ払った進藤を介抱してるとか? あーあ。 永夏ってば、怒られても知らないんだからな。 ……だけど、なんでだろう。 永夏と進藤を残して塔矢を探しに行った時よりも、僕はなんだかホッとしてるみたいだ。 あれ? 廊下の反対側から、何かが近づいてくる。 猫……だよね、たぶん。 やだなあ、野良猫が入り込んだのかなあ。 それとも、誰かのペットかな。 従業員出入り口って書いてあるドアのほうから来たみたいだし、ここに勤めてる人が、自分のペットを連れてきちゃったのかもしれない。 そうじゃなかったら、宿泊客の誰かのペットだろう。 あんな大きな猫がいいのかなあ。 僕としては、もっと小さくてかわいい猫のほうが好みなんだけど…。 うーん。 日本人の嗜好って、よくわからないなあ。 * * * 「にゃあ……」 にゃ、にゃあ? なんだ?? 日本のホテルでは、猫を飼ってるのか??? なんて非常識な。 韓国の高級ホテルでは、ありえない話だ。 客に猫嫌いな人間がいるとは考えないのか? いや、別に俺は猫が苦手なワケではない。断じて。 ただ、ちょっと相性が悪いというか、正体がつかめないというか。 秀英に「永夏って猫みたいだよなあ」などと言われたことがあったが、冗談じゃない。 こんな生き物と一緒にされて、たまるものか! 「お、猫じゃんか。きっと従業員の誰かが、宴会の残り物をやってるんだな」 倉田が何か言ってる…って、おい。 その「ちっちっち」はなんだ!? 猫を呼ぶときに舌打ちするのは、どこの国もおなじなんだな…などと感心している場合じゃなさそうだ。 なぜ、わざわざ、その生き物をこっちへ呼ぶんだ!? うわっ! 本当に近づいてきた……!! しかたがない。 一時、避難だ。 寝ぼけまなこの進藤を畳の上に転がし、俺は座敷の奥へと移動することにした。 ……しかし、この猫の大きさはなんだ。 本当に猫なのか??? 猫というより、まるで小型の牛じゃないか。 色といい形といい…。 * * * おいおい、なんだなんだー? 高くん、猫が怖いのか? ふん。 だらしないヤツめ。 お? 進藤くん、目が覚めたみたいだな。 高くんに放り出されたのが利いたのか? 「……あれえ? 碁盤だあ…」 まだ眠たそうに目をこすりながら、進藤くんは猫を凝視している。 「ヨセまで打って、整地したあとの碁盤が、こっちに近づいてくる…」 …………なるほど。 たしかに、あの白黒模様は、そう見えないこともないな。 だが、進藤くん。 棋士としては、もう少し冷静な判断力が欲しいと思うんだが。 そのへんのところを、君はどう考えているんだい? * * * 「おや、かわいらしいお客さんの登場ですね」 なに言ってんだよ、佐為。 どこから見たって、整地した盤面じゃんか…って……あれ? ……重いよ。 いつのまに、オレの膝の上に乗ったんだ? しかも、碁盤だと思ってたのに、猫だし。 「ふふふ。ヒカルとお揃いですね♪ かーわいいv」 はあ? 何が、おそろいなんだよ。 「ヒカルもその猫も、立派なおヒゲが生えてますよvvv」 ヒゲ? ……んなわけあるかよ。 「本当ですよ。倉田殿…とおっしゃいましたか、そこのふくよかな人が、ヒカルの頬に落書きをしたんですよ」 なんだってえーーーっ!? 「ひどいよ、倉田さん!」 「バレたか」 バレたか、じゃないよ。 いい年こいて、いたずらっ子みたいに笑ってないでよ。 ……ってゆーかさ。 ちょっと待ってよ。 ほんとに、佐為いるの? 「いますよ」 マジ? つい、いつもの癖で、うしろを振り返りそうになったけど、オレの膝の上でまるくなった猫の頭の上に、大きな白い袖が揺れている。 見上げたら、そこには懐かしい笑顔があって。 ……ヤバい。 オレ、泣きそうかも。 「なんだよ、佐為。今さら出てきたって、もう打たせてやらないぜ」 わざと意地悪く言っちまったけど、佐為は、にっこりと笑ってくれた。 「いいんですよ。わたしの碁は、ヒカルの碁になって、ヒカルの碁は、いつかまた誰かの碁になって、永遠に受け継がれていくのですから」 もう。 勘弁してくれよ。 マジで涙出てくるじゃんか。 「なーなー。俺、佐為と打ちたい。いいだろ?」 倉田さんって、ヘンな人だよな。 空気が読めないのか、空気を読んでるから、こういう態度に出るのか。 楊海さんが碁盤を持ってきてくれて、宴会場は対局場に早変わりした。 塔矢と倉田さんと楊海さんと永夏と社と…。 いつのまにか秀英も来てるし。 佐為が、みんなと盤を囲んでるなんて、なんだか夢みたいだ。 ずっと前に佐為に聞いた話だけど、碁って「手談」とも言うんだって。 ただ打ってるだけで、何もしゃべっていないように見えても、実は石で会話をしてるんだ。 そのせいかな。 いつのまにか、佐為とみんなは友達になってた。 ふはは。 ほんとに手談なんだな。 すげえや。 オレも、白と黒の碁石色の猫を膝の上に乗せたまま、佐為と打った。 やっぱり勝てなかったけどさ。 「強くなりましたね、ヒカル」 佐為の幸せそうな笑顔が、なんだか、じんわりと滲んで見えた。 * * * 夢のような不思議な時間は、あっというまに過ぎていった。 そろそろ日付も変わろうという時刻。 白い狩衣が透き通るように揺らめいたかと思うと、佐為は、すうっと静かに消えていった。 声もなく涙をこぼす進藤の肩を抱きしめて、ボクはこどもをあやすように、彼の頭をぽんぽんと叩いた。 「行こう、進藤。もう夜も遅い」 進藤の膝の上に居座る不届きな猫をどけて、ボクは彼の手を取った。 素直に従い、立ち上がろうとした進藤は、次の瞬間、かっくりと膝を折った。 「進藤っ!?」 あわてて身体を支えたボクにしがみついて、進藤は涙声でこう言った。 「あの猫…重すぎ。足、しびれた…」 グッジョブ、でぶ猫! ボクは進藤の細い腰に腕をまわして、しっかりと身体を密着させて支えなおした。 「それでは失礼します。おやすみなさい」 佐為の碁を並べるのに夢中になっている人たちに、軽く挨拶して、ボクたちは宴会場をあとにした。 廊下でもエレベーターのなかでも、進藤はひとことも口をきかなかった。 時折聞こえてくる鼻をすする音が、彼の心情を物語っていた。 彼の心をさらっていったのは、古い馴染みの幽霊。 つかのまの喜びと引き換えに、深い傷跡を残して消えていった美しい棋神。 彼が再び自身に碁を禁じてしまうのではないか、彼の心が過去にとらわれてしまうのではないかと、ボクの胸に黒い雲が広がる。 ボクはキミを信じてるよ、進藤。 キミを1番知っているボクだからわかる。ボクだけがわかる。 キミは、ボクの永遠のライバル。 そして、ボクの永遠の恋人だ。 明日になれば、きっと眩しいほどの笑顔で、ボクのとなりに並び立ってくれるに違いない。 そう信じてる。 でも…。 やっぱり少し不安なんだ。 だから、その…/// ふたりの愛を確かめさせてもらっても…いいかな? * * * あああああ。 あかん。 ほんまに、あかんて。 さっきまでとは別の意味で、ヤバいことになりよった。 部屋を出て行く時の、あの塔矢の目。 傷心の進藤をいたわるような優しげな目の奥に、獲物を狙う野生動物のような獰猛な光が浮かんどったわ。 間違いない。 塔矢のヤツ、今晩キメる気や。 北斗杯は、明日からが本番なんやで。 今から本番やって、どないすんねん。 ……あ。 しもた。 はずしてもうた。 見てみい。 これ読んどる人、みんな引いとるやんか。 全部おまえのせいやで、塔矢。 ……とにかくまあ、ほどほどにしときや。 頼むで、ほんま…。 おしまい |
「結」の章・イミヤさまからのご提案
*ぜひ猫のがびさんを! ヒカルのひざの上に!
*「転」でヒカルの顔にはきっと猫ひげがかかれているに違いない! がびさんとおそろい! かわいい! それを見て佐為が喜ぶはず!
*「猫のがびさんがにゃあと登場」「がびさんの活躍で他のヤツらも追い出されることなく佐為とお友達に」「佐為にお友達ができてヒカルも満足」「アキラはどうなるのでしょう?」
……ほんとに「がびさん(猫)」出しちゃいましたよ(汗)。ぜんぜん活躍してませんけど。
しいて言うなら、永夏をヒカルから引き剥がしたくらい(苦笑)。いつのまに永夏は猫嫌いになったの?
とにかく、なんとか完結することができました。例によって蛇足ページを作りました。こちらからどーぞ。
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