013. Nonsense
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013.
 Nonsense
       塔矢アキラの日記より抜粋


 11月○日 月曜日

 今日、スギヤマヒロシという奇妙な名前のドラッグストアで、シャンプーとトリートメントを買った。

 緒方さんの言う「男として責任ある行動」の、記念すべき第一歩だ。

 そんなことより、今日は本当にびっくりした。

 マイ・フルーティー・エンジェル進藤が、いつもより何百倍もかわいかったんだから。

 口紅をつけてたのかな。

 透明感のあるつややかな赤い唇…。

 進藤! キミはボクに碁を打たせないつもりなのか!

 あんな…、あんな魅力的なキミを見せつけられて、平気で打てる男がいるとでもいうのか。

 反則だぞ、進藤。

 あの場で、キミの唇を奪ってしまわなかった、理解あるボクを褒めてもらいたいくらいだ。



 ……でもね、進藤。

心配しなくていいんだよ。

女の子にとって、ファーストキスは特別なものなんだろう?

碁会所でいきなり…なんて、そんなムードのないファーストキスなんて、キミには似合わない。

あんなところでムリヤリ唇を奪ったりしないから、安心してv

シチュエーションに決まりがあるってことくらい、ボクだって、ちゃんと知ってるんだ。

夕陽の差し込む放課後の教室でなくちゃいけないんだろう?



………

……………

…………………

ちょっと待ってくれ。

ボクたちは、もう学生じゃない。

いったい、どこの教室でファーストキスをすればいいんだ…?



  後略







 11月△日 木曜日

 今日は手合いがあったので棋院会館に行った。

 ボクの席から進藤の姿がよく見えた。

 棋院も、なかなか粋な計らいをしてくれるじゃないか。

 ……と、思っていたのだが、今日も進藤は口紅を塗っていて、ボクはそのみずみずしい果実のような唇の前に、完全にノックアウトされてしまった。

 星を落とすことはなかったけれど、あんな棋譜、誰にも見せられない。



 はあ。

 罪なひとだね、キミは。

 今のままでも世界一かわいいのに、さらに愛らしく変身していくつもりなのかい?

 高みをめざすその姿勢は評価できるけれど、キミにメロメロなボクのハートは、もうもたないよ。



 このまま、碁の勉強に身が入らなくなってしまったらどうしよう。

 そんなボクに呆れて、キミが遠くへ行ってしまったら…?

 そんなの、ダメだっ!

 ボクは、一生キミを放すつもりはないんだから。

 そうとも。

ボクは、キミにふさわしい男になる。

 決して、キミに呆れられたりするものか。

 そのためには、まず、現在の状況を整理して、ちゃんと碁にうちこめるように環境を整えたほうがいいのかもしれない。



 碁に専念するには、少々気持ちを揺るがせ過ぎる、進藤の等身大ポスター。

 スナップ写真から、拡大に拡大をかさねて作った、ボク渾身の力作だけど、残念ながら、クロゼットで眠っていてもらう必要がありそうだ。

 それから、パソコンのデスクトップとスクリーンセーバー。

 進藤のベストショットばかりを集めたお宝だけど、ずっと見ていたくて、いつまでたっても、棋譜整理のソフトを起動できない。

 でも…。

 物理的に進藤の写真を遠ざけてみたって、ほら、こうして目をとじれば、進藤の愛らしい笑顔がまぶたに浮かんでくる…。

 ああ…。

 目をあけたくない…v



   中略



 ……あれ?

 日記を書いているうちに、うたた寝をしてしまったみたいだ。

 ボクとしたことが、なんたる不覚っ!

 せっかく進藤が苺のようなみずみずしい唇でボクの名を呼んで、きらきらと光がこぼれるような瞳でボクに笑いかけてくれたいたというのに。

 ちゃんとふとんの中で寝ていればよかった。

 そうすれば、朝まで進藤の微笑みに包まれて、眠っていられたのに…。
 ……と。

 ん?

 ああああぁぁぁっ!!←「#%&△*!?」を、さすがに日記では、文字で記したものと推測される(管理人注)



 まただ…。

 どうして、この年でおもらしなんて…。

 しかも、今日は机に伏せて、うたた寝していただけなのに。

 ふとんで熟睡していたわけじゃないのに。

 病院に行って、診てもらったほうがいいのかな。

 ……でも。

 ちょっと待てよ。

 この現象は、愛しの進藤と温泉宿で2泊3日v以来、起こり始めたことだ。

 もしかしたら、進藤を想うこの熱い恋心と、何か関係があるのかもしれない。

 日記を読み返してみたら、確かに、進藤と会った翌日に起こりやすい傾向が示唆されている。



 ……そうだ。

 緒方さんに相談してみよう。

 このあいだは、緒方さん、途中で酔っ払っちゃったけど、赤ちゃんがどうやってできるのか教えてくれたし、大いに収穫はあった。

 今度は、この悩みをきいてもらおう。

 こういうとき、やっぱり緒方さんは頼りになるなv




    <コメント>

ナンセンスといえば、やっぱり「アキラさんの勘違い日記」(笑)。
そろそろ、アキラスキーのみなさまから、お叱りが来るかもしれません(滝汗)。

「緒方さんの○○授業」のシリーズ化も狙ってみました。
今度はナニを教えてくれるのかな?←拙宅は表サイトなので、期待値はマイナス120

ところでアキラさん。ヒカルがつけてるのは、色つきリップですよ。
これで、ほんまもんの口紅なんぞつけさせた日にゃあ、どうなることか(笑)。