019. D.C(ダ・カーポ)
本文へジャンプ



019.
 DC(ダ・カーポ)   塔矢アキラの日記より抜粋




   1月1日


 今日から、新しい1年が始まる。

 この日記帳も、初代のものから数えて、もう7冊目だ。

 新しい年。
 新しい日記帳。

 去年とおなじ日付に戻るだけなのに、なぜか気持ちが引き締まる。

 言い古された言葉だが、「一年の計は元旦にあり」。
 新年の抱負を書いてみよう。

 そういえば、過去には何を書いたんだ?



   小学4年生:お父さんと、四子で打てるようになりたい。

   小学5年生:芦原さんに勝ちたい。

   小学6年生:進藤ヒカルと、もう一度打ちたい。

   中学1年生:進藤ヒカルの本当の力が知りたい。

   中学2年生:進藤ヒカルのライバルになりたい。

   中学3年生:進藤ヒカルと、男女交際がしたい。



 ああ、なんということだ。
 中学2年生までは、必ず新年の抱負を実現できていたじゃないか。

 まったく。
 どうしたというんだ、去年のボク。



 ……そう。
 あの秋のイベントで、ボクたちの距離は一気に縮まったと思ったのに。

 バス亭でのプロポーズは、進藤の愛らしいくしゃみに遮られてしまったんだっけ。

 クリスマスイブの夜、チャンスは再びめぐってきたけれど。
 ボクのあふれるほどの愛が、進藤の重荷になってはいけないと、つい自粛してしまった。





 >>…………あのぅ。アキラさん…。

 なんだ。
 管理人じゃないか。

 邪魔しないでくれ。
 ボクは今、去年の自分を反省して…。

 >>でも、それじゃあ、お題にあってないんだけど。

 なんだって?

 >>去年の反省だと、「D.S(ダル・セーニョ)」ぐらいにしかなってないんじゃない?
 >>お題は「D.C(ダ・カーポ)」。つまり、「いちばん最初に戻る」なのよ。わかってる?

 いちばん最初だと?

 ボクと進藤の運命の出会い……愛の軌跡の序章を語れというわけだな。
 なるほど。
 よくわかった。





 あれは、ボクたちがまだ恋も知らない、幼いこどもだった頃のこと。

 >>今でも十分こどもじゃない。

 うるさい!

 ボクたちの愛の物語を聞きたくないのか?

 >>あー…。うん。まあ、聞いてやってもいいけど…。

 だったら黙って聞いていろ。



 えーっと、こほん。

 そう。
 あれは、4年前の冬のことだった。

 ふんわりと柔らかい金色の前髪を風になびかせて、ボクの目の前に、天使が降りてきた。
 くるくると忙しく動く大きな瞳には、きらきらと星が輝いていたっけ。

 対局者を探しているようだったから、ボクは大急ぎで彼女のもとへ駆けつけたんだ。

 まるっきり初心者の手つきで石をつまむ可愛らしさとは裏腹に、その天使は、老練な手筋でボクを翻弄した。

 ……実は、それからというもの、進藤の打つ碁ばかりが気になって、肝心な進藤自身に惹かれるようになったのは、去年の秋に名人戦の一次予選で対局してからのことなんだ。

 誤解しないでほしい。

「愛」という名のファインダーを通して、ボクの記憶のアルバムをめくってみると、ボクは確かに、初めて会ったあのとき、天使に恋をしていた。

 でも、不思議なことに、それ以来、ボクは天使を見失っていたような気がする。

 何度も進藤には会っていたはずなのに、一次予選で対局して、やっと天使と再会できたような……そう、初めて会ったあの日に戻ったかのような、不思議な感覚をおぼえたっけ。



 ああ。
 進藤…。
 マイ・スイート・ミステリアス・エンジェル…v

 恥ずかしがり屋さんで、まだまだ幼いキミ。

 ボクのこの熱い想いを告げたら、キミはどうする?

 キミの柔らかそうな胸に、ボクの髪を触れさせたいって言ったら…。

 ……いけない。
 ダメだぞ、ボク。

 キミを困らせるようなことはしないよ。

 キミがもう少し大人になるまで、ボクは緒方さんに習った方法で、この想いをおさえてみせる。





 >>あのぉ…。たびたび悪いんだけど…。

 なんだ。
 また出てきたのか。

 >>そろそろ紙面も尽きてきたので、このあたりでまとめてもらえると助かるんだけど。

 ふん。
 紙面の都合だと?

 青春真っ只中のボクたちにアテられて悔しいと、正直に言ったらどうだ。

 ……まあいい。

 だいぶ散文的になってしまったが、ここはやはり正月らしく、新年の抱負を語るべきだろう。

 >>やっぱり、そこに落ち着くわけね。

 うるさい。
 他人の日記を、じろじろ見るな。
 しかも、書いてるそばから。



 今年の抱負。
 去年の悲願を達成し、新たな目標に向かって邁進するのみ。

「進藤と恋人同士になって、ファーストキスをする!」

 どうだ、まいったか。





    <コメント>

あけましておめでとうございます♪ 今、6月ですけどね(爆)。

アキラさんがヒカルくんに惚れたのはいつ?……をテーマに書いてみました。

初対面で一目惚れ。でも、佐為がいる間は「碁」だけに惹かれていたアキラさん、ということで。

……となると、北斗杯の合宿では、もうヒカル激ラブ状態だったわけで、社と一緒に寝かすというのは、おかしいぞっ!

この先、どっかで帳尻あわせなければ…(滝汗)。